ふろむだ@分裂勘違い君劇場

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プロにタダで仕事を依頼するために必要な条件

プロに無料で仕事を頼む場合、「お金以上に価値あるもの」を支払わなければならない。

「お金以上に価値あるもの」を支払わずにプロにタダで仕事を依頼するのは、侮辱搾取のどちらかであって、プロたちの反発を招くのは当然。

肉親も友達も恋人も、その例外ではない。たとえ数十年来の親友相手であろうと「お金以上に価値あるもの」を支払わずにプロにタダで仕事を依頼することはできない。

お金の代わりに「お金以上に価値あるもの」を支払うというのは、実はそんなに珍しくない。その多くは単なるバーター取引であって、それらは侮辱でも搾取でもない。

それはそのプロのブランディング、経験、実績、ノウハウ、メディアへの露出、プレゼンスの拡大、人脈、チャンス、名誉、自分が良いことをしている気分、など、「正当な対価よりも価値があるもの」だとそのプロ自身が感じるものであればなんでもよい。

結局のところ、「ほんとうの意味でプロにタダで仕事を依頼する」ことはできない。現金という形であるか、その現金以上の価値のある非金銭的な報酬であるか、という「支払い形態の違い」があるだけで、いずれにしても「正当な報酬」自体は支払わなければならないのである。

もちろん、「正当な対価よりも低い価格」でプロに仕事を依頼するくらいなら、むしろタダで依頼したほうがマシではある。自分の仕事を安く見られることは、タダで仕事を頼まれる以上の侮辱だからだ。しかし、だからと言って「プロにタダで仕事を依頼してよい」ということにはならない。

例外は、こちらから依頼したのではなく、プロの方から「無料でやってあげましょう」と申し出た場合だ。この場合、十分に腰を低くしてお願いしている態度を最後まで維持できるのなら、プロに仕事を依頼することはできる。

また、「プロに、その人がプロではない領域の仕事を頼む」という場合は問題ない。おとなりに住んでいる時給10万円の戦略コンサルタントに「1泊2日の夫婦旅行中に子供をタダで預かってもらう」のはOKだ。これは「近所づきあい」の範疇だからだ。肉親、友人、恋人などに、「人付き合い」の範疇で仕事を頼むときも同じ話だ。「日常的な助け合い」の範疇でなら、仕事を頼むのはなんら問題はないが、WebデザイナーにWebデザインをタダで頼むとなると、それはプロの仕事になるので、金銭的にしろ、非金銭的にしろ、「正当な報酬」は必ず支払わないと、人間関係がおかしくなる。

プロに「正当な報酬」を支払うだけの金銭的な余裕がなく、それに代わる非金銭的な報酬を支払うこともできない場合、ものすごく腰を低くして頼まなければならないし、その態度を最初から最後まで貫かないといけない。この感覚がわかっていない人間が「プロなんだから簡単でしょ」「友達なんだから」などと不用意な発言をすれば、プロは怒りだすだろう。

「正当な報酬」を支払わずにプロに仕事を依頼して反発を招く人は、次のいずれかを見誤っているパターンが多い。

(1)「プロにタダで仕事を依頼する場合、お金以上に価値あるものを支払わなければ、それはプロに対する侮辱or搾取である」ということを理解していない。
(2)「プロにとってお金以上に価値あるもの」を支払っていると依頼者は思っているが、プロにはそれほどの価値があるとは思えない「報酬」でしかない。
(3)友人・肉親・恋人に対して「甘え」がある。
(4)ボランティアをしたいプロもいるだろうから、と、プロに依頼してしまう。プロの方から申し出ればそれは「ボランティア」だが、プロに依頼している時点でそれは「ボランティア」ではない、ということを理解していない。

プロにタダで依頼するのにはこれらの気遣いとバランス感覚が必須であり、それらが少しでも欠けると容易にトラブルになる。
気遣いやバランス感覚に自信がない人は、自由市場経済システムの便利さに感謝しながら、普通に十分な現金を支払って依頼した方が、よっぽど簡単でリスクが少ないと思う。