分裂勘違い君劇場の別館

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GATEで自衛隊が戦っている本当の敵

「日本の銀座に、異世界へのゲートが開いた」という設定のGATEというアニメがある。

日本政府はこのゲートから自衛隊を異世界に送り込む。
この異世界の文明レベルは中世くらい。
当然、自衛隊と中世の軍隊では、武力の差がありすぎて、
単純なバトルものとしては面白くならない。
敵キャラが弱すぎるゲームをやっても全然楽しくないのと同じだ。

しかし、このGATEというアニメは、なかなかに面白く作りこまれている。

いったい、どのようにして、この面白さが創りだされているのだろうか?

自衛隊が戦っている相手は、一見、異世界の軍隊のように見えるが、
実は、そうではない。
本当の敵は、ゲート利権を狙っているアメリカや中国などの、
こちら側の世界の国々なのだ。

このアニメの中で、
中国の主席は「このゲートから中国国民の半分を異世界に送りたい」という趣旨の発言をしている。
アメリカもこの異世界の利権を狙っている。
頭の切れる自衛隊幹部も、
「日本が異世界へのゲートを独占できるならば、
たとえ日本が世界中から完全に孤立してしまっても、
生きていける」
という趣旨の発言をしている。

世界中の国々が、ゲート利権を日本から取り上げるチャンスを虎視眈々と狙っている。
当然、自衛隊が何か「非人道的」なことをやらかせば、
世界中の国々は、それを口実に、「日本にはゲートを管理する資格はない」と言い出し、
「ゲートは日本政府ではなく、国際連合で管理すべきだ」
という方向へ、話を持っていこうとするだろう。

そんな中、異世界に送り込まれた自衛隊は、
「いかにして、他国に「口実」を与えないように、異世界に根を張るか?」
というゲームをやることになる。

このため、主人公である伊丹(自衛隊員)が現地人を
自衛隊の基地に連れてきたときに、大問題となる。
国際世論から「強制連行」だと非難されかねないからだ。
強制連行ということになったら、他国が日本のゲート利権を取り上げる格好の口実にされてしまう。

しかし、伊丹が連れてきたのが「火龍に襲われた村からの避難民」であることが判明し、
むしろそれは歓迎されることになる。
「難民受け入れ」であれば、十分に大義名分が立つし、
国際世論にも付け入る隙を与えないからだ。
それどころか、現地人とのパイプもできるし、現地文明に関する情報が大量に手に入る。

結局、このアニメの主人公は、「自衛官 伊丹」というより、
「外交官 伊丹」、もしくは、「政治家 伊丹」なのだ。

この物語は、伊丹が、これから、外交官あるいは、政治家として成長し、
現地の人々との関係を築きあげていくことで、
深みを増し、面白くなっていくのではないだろうか。

ある意味、これは、いかにも「自衛隊」らしい戦いとも言える。
どの国の軍隊も海外に派遣されれば、一種の外交官になるが、
海外に派遣された自衛隊員は、ことさらその傾向が強くなる。
主なミッションは、敵を殲滅することよりも、現地の人間の信頼を勝ち取ることだ。
中世世界における自衛隊にとっては、敵を殲滅することはさして難しい仕事ではないので、
なおさら、「現地との関係構築」こそがメインミッションになっていく。

このアニメのタイトルは、
「ゲート 自衛隊 彼の地にて、斯く戦えり」だが、
自衛隊がいったい「何」と戦っているのか、
そこが見えていないと、
このアニメの面白さが見えなくなってしまうのではないだろうか。