ふろむだ@分裂勘違い君劇場

分裂勘違い君劇場( https://www.furomuda.com/ )の別館です。

百年前の人に、百年後に現在のようになる、と言って信じるだろうか?

 百年前、

百年後、量子力学の原理に基づく半導体素子よって、人間の何億倍もの速度で計算する機械が何億台もつくられ、それらが地球規模のネットワークで結ばれて、世界中の何億人もの人が地球の裏側の事件をリアルタイムで世界中に知らせられるようになる。それを前提に国家百年の計を立てねばなるまい。

と言って、政策議論をしようとして、まじめに取り合ってくれただろうか?

 

百年前、

百年後、日本は、肉眼どころか双眼鏡ですら見えないほど遠くにいる敵を撃滅する兵器を大量に搭載した戦艦や、機関銃や手榴弾を大量に浴びてもすべて跳ね返すだけの強力な装甲に覆われ、厚さ4cmの鋼板も打ち抜けるほどの威力と5km先のサッカーボールを撃ちぬくほどの超精密な射撃精度を兼ね備えた大砲を持ち、時速60kmで走行可能な戦闘用車両を何十台も保有し、人類を10回滅ぼせるだけの軍事兵器を持った世界最強の軍事大国と軍事同盟を結んでいる。それを前提に、国家百年の計を立てねばなるまい。

と言ったら、机上の空論だと思ったのではないだろうか。

 

百年前、

百年後、日本の農業の労働生産性は今の何十倍にもなるため、いまの数分の1の農業労働力しか使わずに今の何倍もの農産物を生産しようと思えば容易にできるようになっている。それに加えて、とてつもない分量の食料を凄まじい低コストで、地球の裏側から運んでこれる超巨大貨物船の出現で、世界中から恐ろしいほど安価に農産物を輸入できるようになっている。このため、日本人の大部分は農業につく必要がなくなって農業以外の職業についている。それを前提に、国家百年の計を立てねばなるまい。

と言って、話が通じただろうか?

 

なぜ百年後の正しい未来が非現実的に見えてしまうかというと、たいていの人は、未来というのは、現在の延長線上にあると思い込んでいるからだ。「明日」は常に「今日」と地続きであり、不連続な飛び地に明日がやってくるということが、どうしても感覚的に理解できない。量子力学の台頭を誰が予測できただろう?


戦艦の時代に生きている人の精神世界では、未来は現在の戦艦をより高性能化したものになることこそが「現実的」な未来予想図に思える。未来は、より大きく分厚い装甲と巨大な砲塔を備えた戦艦の時代になるに決まっていて、イージス艦のような大量の超高性能センサーと高速演算コンピュータと広域電子リンクシステムと超高性能ミサイルが密結合されたネットワークが戦場の命運を分けるようになる未来は非現実にしか思えない。

 

もちろん、文化財や絶滅危惧種の保護、財政、政治制度など、百年前の人たちが、百年後のためにできたこともそれなりにあったろう。だから「百年後にどうなるかわからないから」という理由でうなぎを絶滅させてもいいということにはならないし、文化財を破壊していいことにはならないし、際限なく国債を発行して子孫に借金を押し付けてもいいことにはならないし、野放図に放射性物質を撒き散らしてもいいということにはならないし、簡単に戦争に巻き込まれるような憲法に改正しても問題ないということにはならないだろう。
しかし同時に、子孫たちのための政策を議論する場合、百年後のために今から心配して意味のあることと、そうでないことの区別を十分につけて議論しないと、あまり意味のある議論にならないどころか、現在の人々の生活に無駄な犠牲を強いることにもなりかねないのではないだろうか。